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23章:レコード原材料

ワックス盤 録音カッティング

1:1951年[昭和26年]電気録音以前の録音については、SPレコードの録音に機械式ラッバ[ホーン]吹き込み直録音に*ワックス盤[ロウ盤]が使用されていました。
壁に備え付けられたホーンに向かって直接、楽器演奏をおこなうラッパの先端に付いたカッターヘッドが回転するターンテーブルの上に載せたワックス盤に直接吹き込まれた音を刻む込む方式[旧方式ダイレクト カッティング]。
1.ワックス盤は3〜5cm程の厚さがあり、色は茶褐色系。
2.バイト[切削用の刃]で削る仕組み、刃先は鉄、サファイア、ルビーを使用。
3.溝は先に鉄バイトで深削りして追いかけるように1mm以内の段差を付け、サフィアのバイトが鏡面状態にて滑らかに削って表面加工して仕上げる。
当時の機械の呼び名はワックス盤仕上げ表面切削機と言います。
ワックス盤の温度管理は難しく、暖かくとも冷たくとも音溝は上手く切れないので常時30〜40度にて保温管理されていました。[当時記録
温度が低いと表面が鱗状になり、温度が高いと切断された削りカスが表面に付着するなど難点が山積とされていました。

ワックス盤のメッキ

ワックス盤での録音は何枚も使用できないので歌であれば1曲4枚程とされていました。
録音時間に合わせた音溝のピッチは1インチにつき3分で録音時間84本で96分で、約106本位となります、ワックス盤は*非伝導体なので導電性を持たせる必要があります。
昭和初期はワックス盤の表面にカーボンの粉を塗布、[黒鉛法]が主流されていましたが、雑音が多く、技法に問題が残りました。
その後、[1930年後半]アメリカ国のベル研究所が真空中で金の微粒子を表面に蒸着させるスパッタリンク法が開発され、日本もこの技術を採用しました。[CDのアルミ蒸着と同
表面蒸着にはムラがあり均一な製品にならず後に*化学反応法に定着。

*化学反応法:水と化学物質を混合させた液で洗浄 蒸着をする方法。
*非伝導体:熱や電気を伝えない物体。

レコード製造工程

1:マスタープレス:メタルプレスを使ってのレコード製造。
*褐炭あらい布を抽出したビチューメンを加熱蒸気で精製した淡黄色の結晶性破断面をもった固形材料です。
レコードの滑剤としても使われます、一定の厚さになったものは溶かし直して再利用もできる。
*褐炭[カッタン]:炭化の程度の低い、暗褐色の石炭、すすが多く、臭気が強く、火力が弱く灰を多く残す。
*ビチューメン:瀝青[レキセイ]:天然のアスファルト、タール。
*ロウ:褐炭の溶剤を抽出したモンタンワックスを主成分に蜜蝋、ハゼの木の実木ロウなど最適な比率で溶解混合し、型に流して固めた物。
*ハゼの木:ウルシ科の落葉高木、果実は楕円形で白く果皮より蝋を取る。
関東以西の暖地に自生します。

[LP][EP]レコードの製造

1:1951年[昭和26年]LP製造 1954年[昭和29年]EP盤 製造開始。
原料はSPレコードと異なり、塩化ビニール樹脂を主体としたものでありました。
針音がが少なく、耐久性があり、軽量で、破損し難く、着色自由で録音時間が長く、かつ高忠実度性でSPレコードの難欠点を全て補うものでありました。
当初の原料はアメリカよりLP(450×150、210g)、EP(200×80、重さ70g、厚さは3mm位)のビスケット状にて国内は輸入していました。
2:1956年[昭和31年]国内生産が開始されました。
ビスケット状原料の製造方法は配合された材料を熱ロールにて練り合わせ、カレンダーロールで所定の大きさにナイフで切断、冷却板上で冷却固化させます。
製造されたビスケットは熱板上に金網、あるいはクロムメッキを施した銅板上に置き、その上に3〜4枚載せて加熱し軟かくします。
#LPの場合には軟化した原料を3等分して重ね合わせ、下金型のレーベルの上に載せ、その上にレーベルを置き、プレス機に挿入する。[耐圧力100t]成形圧力[140〜180kg]
約50秒で1枚製造されました。
その後、原料をペレット状にしたものを使用しました。
この原料の製造方法は、配合された材料を熱ロールで練り合わせた後、圧延ロールで所定の厚さにし、冷却固化させ粉砕機にて粉砕した後、押しだし機に投入、ダイスにて線状に引出し、水冷したのちカッターにて切断、ペレット状にします。
#EPレコードの場合はこのペレット状にしたものを金網箱、またはお椀状の容器にいれ、電熱器の風で加熱し、軟化させる、LPと同様に金型の下型に置き、プレス機に挿入する。
耐圧力は35t、圧力150kg、約30秒で1枚製造します。
現在ではパウダー状の原料を使用しています。

メタルマザー

段階1:電鋳メッキ:油の膜をきれいに洗い流したワックス盤は周りをゴムのバンドで囲み外に液が洩れないように硝酸銀、水、アンモニア水、を混ぜた液で洗浄し、狸の毛で作った柔らかな刷毛等で溝の底部はじめ隅々までなでで泡を取り除きます。
そこにホルマリンと水の還元剤液を加えます、それにより、壁面全体が白くなりワックス盤の表面が純銀の膜で覆われます。
段階2:銅版:電気鋳造[メッキ]されたワックス盤は均一にメッキが生じているかを確認します。銅板を回転させ、銅メッキを施し、厚さ1mm程度の銅版ができます。
段階3:この状態ではワックスが付着しているので銅とワックスの間に刃物を入れ取り外します。この銅版がメタルマスターといいます。これを利用してもレコードを作ることも可能となります。当時はテープレコーダーが存在しなく音の確認ができず試聴盤を2〜3枚ほど作り音質を検査して市場にだせるかどうかを判断としていました。
段階4:銅版[凸版]に剥れ易いように微粒子の物質を持つい音溝に影響のない剥離処理を施した後、再び銅メッキし、剥がすと今度は凹の銅版がとれます。
メタルマザーはレコードの最初の元になるため大変に重要な物となります。
度重なる厳重な検査を受けます。[曲の間違い、雑音、その他の諸問題等]

スタンパー

段階1:メタルマザーからスタンパーを作ることとなります。
スタンパーは銅版[銅板の表面を凹版にしてインクを流して印刷する方法]のままでは柔らかすぎてスタンプには不向きとなります。
LPレコードは柔らかすぎると溝が細かいのでうまくスタンプができません。
1枚のスタンパーでレコード2,000枚から3,000枚ほど押せます。
1枚のマスターからは10枚以上のスタンパーが作れます。
スタンパー10枚でレコード2万枚から3万枚つくれる計算となります。

マスタープレス

ラッカー盤は硝酸セルローズ、ベンソール、ブチルアルコール、ヒマシ油、などの混合容液をアルミ芯盤上に塗布して乾燥させたものです。
ラッカーマスターの表面は銀の膜で覆われています、これをニッケルでメッキすると銀はラッカー盤から剥れてニッケル盤に付着します。
この銀面マスター盤はスタンパーと同じようにレコードをプレスすることもできます。

DMM[Direct、、Metal、Mastering][1980年代]

100年の歴史に画期的な革命レコード出現。

従来の方式:マスターテープ〜ラッカ盤にカッティング〜ラッカーマスター〜ラッカー盤表面に銀の化学メッキして剥離〜メタルマスター〜ニッケルメッキして剥離〜メタルマザー〜クロームメッキして剥離〜スタンパー〜プレス〜レコードの工程

*DMMの方式:メタル原盤に直接カッティングは従来の工程が省略される技術であります。
メタルマザー〜スタンパープレス〜レコード

開発はテルデック社レーベル名テレフンケンで高い音質と品質を製造する為の考案技術。
ラッカー盤はカッティングに適してはいるが安定した材質でなく、気温、湿度、経時による変化があり、ラッカーには柔軟性があり質による変形も生じやすく、カッティングした音溝も経年変化する恐れもあります。

*DMM方式よるカッティングは音質、品質はグランドノイズの減少に接がります。
パルス性ノイズ、高域ノイズ さらに無音溝でのノイズ減少も3/1オクトでのスペクトラム分析では6デシベル[dB]の改善がなされます。
針と音溝との摩擦音、低域のランブル改善、トランジェントの改善、高域の倍音、などが以前のレコード製造からみるとDMM技術はよりすばらしい方式の革命を生じました。

レコードのすばらしさにあらためて感動

これほどレコードに感動できるのか…と深く感じました。
これほどの音源が深溝に眠っていたのか…と不思議です。
レコードのエネルギーによるサウンドは魔物的でもあり衝撃的でもあります…
いろいろのすばらしさの疑問が脳裏をかすめます
理屈で片付けてきたレコード音溝の再現…今は驚嘆の一聴です。
超越させるほどのサウンドの秘密はどこに潜んでいるのか…
解明するにあたり学ぶことが沢山ある事に気付きました。
歴史の重さの響きにあらためて深い感動をえることができました

22章:LP[ステレオデスク]レコード出現